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ふくしまの酒 NEW WAVE

NEW WAVE 02 TOJI 女子!
鶴乃江酒造 林 ゆり

心ほどけるような、やさしい晩酌酒を

鶴乃江酒造

林ゆり(専務取締役・一級酒造技能士)

1996年、東京農業大学醸造学科卒業後、実家の鶴乃江酒造に就職。同年より福島県清酒アカデミー職業能力開発校で学び、酒造技能士の母とともに人気銘柄「ゆり」を手がけて発売。2021年10月、代表取締役に就任した夫の向井洋年さんと蔵を守る。

教科書通りではない酒造りの現場へ

寛政6(1794)年 から続く、鶴乃江酒造の長女として生まれた林ゆりさん。1996年、父と同じ東京農大醸造学科を卒業し、実家の蔵に入社した。
「大学で学んだことを“実際にやってみたい”と思い、実家に入社しました。また、小さい蔵元の仕事の大変さを間近に見ていたので、家族を手伝えればという気持ちもありました」
当時、7代目当主で蔵元の父が主に営業で外回りなどを担当し、蔵では酒造技能士の母が酒造りの重要な仕事を担っていた。ゆりさんは、母もかつて学んだ「清酒アカデミー」(福島県清酒アカデミー職業能力開発校)に入学。実際に酒造りをすることで、次々と出てくる細かな疑問点を先生や先輩たちに聞きながら取り組んだ。
「当時の私は、学問上の知識しかない頭でっかちでしたが、小さい頃から知っていた杜氏さん、蔵のみなさんが温かく見守ってくれて、いろいろ教えてもらえました」

母と手がけた新商品「ゆり」がヒット

入社1年目の冬、「清酒アカデミー」で学んでいたゆりさんは、新商品造りを任される。コンセプトは、“女性が造る、女性のための酒”。東京の百貨店からの提案だった。
「母と一緒に酒質設計をし、福島県の酒米と酵母を使い、華やかで香りのよい純米大吟醸にしようと決めました。また、当時は珍しかった水色の瓶に詰めました」
こうして誕生した「ゆり」は、華やかですっきりとしたきれいな辛口酒で、女性のみならず多くの日本酒ファンの心をつかんだ。
「実は自分の名前をお酒につけるのは、正直恥ずかしくてイヤだったんです。たいした経験もない駆け出しでしたし……。でも、平仮名で覚えやすく、やさしい印象ということで最終的には父が決定しました(笑)」
2003年には結婚していったん実家を離れたが、2007年には夫とともに帰郷。2人で家業を継ぐ決意を固めた。現在79歳のベテラン杜氏、坂井義正さんが醸す「会津中将」は、白いご飯のようなほっこりとした旨みで、家庭料理によく合う食中酒。「ゆり」とともに、どちらも鶴乃江酒造らしい和やかな温もりとやさしさを感じる銘柄として親しまれている。

洗米作業中、1粒1粒の米の吸水状態を確認するゆりさん。粒の大きさ、気温や湿度などによって調整する繊細で重要な工程

左から「永寶屋(えいほうや) 辛口純米 八反錦」、「ゆり 純米大吟醸」、「会津中将 純米吟醸 夢の香」。「ゆり」は母とゆりさんが造りあげた

CHANGE_最大の転機は?

2007年、夫(向井洋年さん)とともに家業を継ぐ決意をして帰郷したとき。
夫は東京農業大学醸造学科の同級生で、もともと鶴乃江酒造の蔵人でした。

PERSON_元気をくれる人は?

鶴乃江酒造のベテラン杜氏であり、
2019年に黄綬褒章を授章された坂井義正杜氏。笑顔が素敵です。
近くにいてくださるだけで安心できて、元気になれます。

FUTURE_あなたの未来像は?

鶴乃江酒造のお酒に囲まれて笑っていたいです。
そのために蔵のみなさんと一緒に成長し、
蔵を守り、健康でいられるように頑張ります!

名称
鶴乃江酒造
創業
1794年
住所
会津若松市七日町2-46
電話
0242-27-0139
営業時間
9:00〜18:00
その他
酒蔵見学無料。要予約
公式サイトへ
Text / Kyoko Kato Photo / Atsushi Ishihara